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執筆者の写真上羽 徹

--- 飛び降り自殺と補償 ---

更新日:2022年8月22日



 最近,大阪で飛び降り自殺をした高校生の巻き添えで,人が亡くなったという事故がありました。

 この事故で,被害者が誰から補償を受けられるか考えてみました。


 まず,飛び降りた高校生の保護者が考えられます。


 民法714条は,監督義務者の責任を定めています。

しかし,この条文は幼い子どもが何かやらかしたことを想定したものですので,子どもが高校生まで成長していれば,普通は適用されません。


 次に,民法709条に基づき保護者自身の過失であるとして責任追及を求めることが考えられます。


しかし,例えばこの学生が危険な場所で自殺しようとしていることを保護者が気づいているにもかかわらず,それを止めなかったというような,保護者の過失がない限り,この条文で責任追及することも難しいです。


 相続で何とか出来ないか考えてみます。

まず,高校生が被害者にぶつかった瞬間に,高校生は被害者に対し損害賠償義務を負うことになります。


そして,その損害賠償義務は,その高校生が亡くなった瞬間に保護者が相続します。そこで,被害者の遺族は,高校生の保護者に対し,相続した損害賠償義務を追及することが可能です。


しかし,高校生の保護者は相続放棄が可能です。相続放棄するとこの損害賠償義務の他,高校生の預貯金などのプラスの財産も放棄することになりますが,高校生が大きな財産を有しているとは考えにくいので,相続放棄することに支障は無いでしょう。


 ということで,保護者が相続放棄してしまえば,被害者の遺族は,高校生側に損害賠償請求をすることは難しそうです。


 では,飛び降り自殺をした建物の管理者に対してはどうでしょうか。これも,しょっちゅう第三者が侵入していて,それを放置していたという過失でもない限り難しいと思います。


 高校生が対人傷害保険に加入していれば補償は受けられるかもしれません。最近は自転車事故を起こしてしまうことに備えて,対人傷害保険に入っていることもまれではないので,そのような保険に加入していればよいのですが。。。

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